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音響バリヤ

サイゼリア

KRAFTWERK / AUTOBAHN

Autobahn-Remastered

Autobahn-Remastered

やっぱり仕切りなおしはコレから、かしら。

1曲目の「アウトバーン」は、22分もある。「ふぁんふぁんふぁーん あうとばーん」って言いながら、クラフトワークの4人が無表情で楽しそうに速度制限無しの道路を優雅にちんたら走る。無表情、なのに、楽しそう!

無表情なのにふざけてる。冷たいフェイスの下でケラケラ笑ってる。クラフトワークを見るといつもそんなイメージがよぎる。他に同じ印象を強く抱かせるのは、ドイツからチリに移住したATOM TMのおっちゃんとかだ。そう、どちらもドイツ人。そして最近ATOMさんがraster-notonから出した新作は、とてもクラフトワークっぽかった。革新性と保守性を両手に持ち、見事なバランスで軸を真っ直ぐ中心に捉えながら曲芸をやり遂げる人たち。その様はもはや年季の入った大道芸。その両極端なクリエイティビティの支点で媒するのは、実のところユーモアである、としか思えない。

1974年に、こんなに可愛らしくて、こんなに実験性豊かで、ミニマルなのに口ずさむ、ある意味カンペキな音楽が、なんてことないかのように気楽な風情で生まれていたというのが、泣ける。泣けるほど感動的な事実とサウンドだと思っている。

そこにある電子音の質感も、選ばれた音色への気遣いも、サンプリングのアクセントも、22分の中での抑揚の付け方も、どれもちゃんとしていて無駄がないのに、力んでない。ゆるやかに伸び縮みをくり返す宇宙のヒモ(strings)のようなしなやかな音響が折り重なる。当時の物理的な限界や電子音楽という事例から掬い上げられるバリエーションの量から考えても、奇跡的な選択と研磨の上に出来上がってしまった音響であり、それでいてどこか即興的室内楽でもあるように感じてしまう。

テクノのルーツでもいいし、ジャーマンプログレの一派でもいい、現代音楽でもあるし、サウンドアートの走りかもしれない。なんでもいいけど、とにかく愛おしくて、何回も聴きたくなる、揺れたくなる、外に持って行きたくなる。時代性というメインストリートを横目に延々とマイペースにぶっちぎり続けるアウトバーン野郎たち。

全季節、全天候、全時間対応できるような音楽こそ、僕にとって本当の名曲だと思っている。しかしこういう音楽があることを思うと、そこに更に「全時代」を付け加えたくなる。けど、それに対応しているかどうかは、30年くらい経たないと分からないっぽい。